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バシャ!と頭上に氷のように冷たい水がかかる。制服が肌にくっつき、気持ち悪い。
「あははは!!うえーい!!ゲイ男を綺麗に洗浄!!」
奴らは楽しそうにハイタッチをして笑っていた。俺は、それを気にせず自分の机に鞄を置いてあいつがいる、保健室へと向かった。
俺は、あれからいじめの標的となった。クラスの奴らも見て見ぬふり。先生に至っては、いじめの存在すら知らない。
でも、そんなの関係ない。俺にはあいつが入れば。あいつを守れればそれでいい。
保健室の扉をあけるとカーテンのしまったベットが一つだけ。俺は、いつものようにカーテンを開け、いつもの俺で声を掛けた。
「よ」
「良樹……」
「おはよう」
「おはよう…ってビショビショじゃん」
「あぁ…そうだな……ここって、バスタオルとかあるっけ?」
俺は、あいつに心配かけたくなくていつものように振舞った。あいつもそれを察して変わらない態度を示していた。
でも、今日のあいつはいつもと違った。
「なぁ、良樹…」
「俺達……別れよう」
「……えっ」
あいつの言葉に嘘は無かった。俺は、バスタオルを肩に掛け、動揺を隠しつつ、「どうして?」と聞いた。あいつは小さく震えながら「だって…」と言葉を続ける。
「俺が居たら良樹の人生めちゃくちゃにする…」
「そんなことない…。俺は、お前が入ればそれで…」
あいつの手に触れようとするとあいつは咄嗟に手を引っ込めた。拒絶した。
「ご、ごめん…」
「あ、いや………」
重たく、気まずい雰囲気がその場に流れる。小さく震えるあいつを見て、俺の中で何かが割れる音がした。
もう修復出来ないそれを俺は、胸にしまっていつものように振舞った。
もう耐えられない。
もう無理。
「今日は、もう来ないから」
「良樹、まっ…」
「明日、いつもの所な」
俺は、あいつの返事を聞かずに保健室から出た。
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