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短い手紙。
男は目の前の娘を見た。
息をするのも苦しかった。胸が熱く、いっぱいになる。
彼女はにこりと笑って、少し首を傾げる。
「ね? ママから手紙、きたでしょ!? ママ楽しいみたいだね!」
「…………ああ、そうみたいだね……」
「それを読んだら、私ももう悲しくなくなったよ!」
「……そう、か」
喉から絞り出した声は掠れていた。目の前が涙でひどくぼやける。
苺が書かれた便箋を再び見下げた。
ああ いつから妻は、こんなに字が幼くなったのだろう
「大丈夫、パパ、もう大丈夫だよ」
娘の気丈な声が耳に入る。
「大丈夫だから。もう頑張らなくていいよ。
一緒にハンバーグ食べよう」
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