たった5分でも君と話したい

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 彼は無言で目の前の小さな体を抱きしめた。夜泣きしていたあの頃よりずっと背も伸びて体つきもがっしりしていた。  それでも変わらない娘の匂いと熱い体温に、彼は妻の葬式以来初めて涙をあふれ返させた。娘の優しい嘘が、心を締め付ける。  5分でも君に会いたかった。  笑顔が見たかった、声が聞きたかった。  世の中の人々は笑った。たった5分のためにそんな多額の金をかけるだなんて、と。  でも自分にとってその5分はかけがえのない夢だったんだ。そのためなら自分はなんだって出来ると思っていた。  けれど今初めて、自分が愚かだったと気付かされた。  画面越しに繋がる世界より、隣にもっと大事なものがあったというのに。私はすっかり忘れてしまっていたようだよ。  娘はしっかり前を向いて歩いていたのに。私を心配してくれていたのに。これでは、どっちが大人か分からない。情けないパパだ、自分に呆れてしまう。  彼は大人気なく泣きじゃくり、娘はそれを何言わずに受け入れた。 「ごめんな、パパ、ちょっと頑張りすぎてたみたいだ」 「うんそうだよ。もう私寂しくないよ。ママには会いたいけど、でも大丈夫。だっていつか絶対天国で会えるもの!」  強く抱擁していた娘をそっと離した。いつのまにか、彼女も少し泣いていた。  それでも目を垂らして笑うその顔は、昔よりずっと妻に似ていた。
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