秒速7.6㎞の神様

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■■■ いつか聞いた宇宙神社なるものは、予想以上に流行っているらしい。 真島は昼食を済ませた休日の昼下がり、道行く人が携帯を空に向けているのを見かけた。 女性が3人で顔を寄せ合って空にカメラを向けている。聞こえてくる会話を聞く限り、もうすぐ衛星がこの辺りを通るそうだ。 あの、宇宙神社の衛星が。 ニュースと同僚から聞いた宇宙神社の話はその当時はすこし興味を持っていたが、打ち上げられた頃は飽きてしまい、そのまま忘れてしまっていた。しかし、世間では結構流行っているらしく、友人達のなかにも"宇宙神社に祈祷依頼した"という話が最近ちらほら出てきていた。別に、話題性があるからしているだけで、大して信心はないのだろうが。あの女性たちもそうだろう。きっと一人だったら見向きもしない。皆が話題にしているから飛びついただけだ。 こんなへそ曲がりなこと考えてるから、社交性がないと言われるのだろうか。 自分で自分に駄目出し、すこし凹む。神様は凹んだり悩んだりしないんだろう。でも、狭い衛星に独りで閉じ込められて願いを聞き続けることを考えるとちょっと気が滅入る。神様がもし居るとしたら、何を考えているのだろう。人の願いを聞き続ける当の神様は、本当は何を望んでいるのだろうか。
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