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びっくりして振り向くと、中年の男性が苦笑を浮かべながら立っていました。
「死んだら楽になれると思ってるんだろ?やめときな。楽なんてもんじゃないから。落ちたときの痛みがいつまでも続くし、誰も自分のことに気づいちゃくれない。孤独なまま、永遠に苦痛を味わうんだ。こんなことなら、どうにか生きてた方がましだった」
聞きながら、その男性のことが怖くてたまらなくなり、Iさんは急いで屋上を出て、自分の部屋に戻りました。
不思議と、それからは自殺願望はなくなったそうです。
リスクを承知で会社を辞め、アルバイトをしながら勉強をして資格を取り、今の会社に転職したとのことでした。
「あの人、きっとあそこで飛び降りた人ですよ」
そう言うIさんに俺は、その根拠を尋ねました。このときの俺はまだ、イタズラの可能性もあるのでは、と考えていたからです。
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