丑三つ時になる前に

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 不思議そうに首を捻る先生に、 「どうしたんですか?」  友人の一人が尋ねた。先生は気まずそうな顔をして、 「見回りをしていたら、この部屋から、女子の笑い声が聞こえてきたんだ」  そう答えた。この階には男子しか泊まっていない。それどころか、男女の接触を避けるため、男子と女子は別の棟に別れて泊まっていた。上も下も、この棟には男子しかいないはずなのだ。 「テレビの音とかだったら響きで分かるから、確かに女子を連れ込んでるものだとばっかり……」  言いながら、だんだんと先生は自信なさげな口調に変わっていった。 「俺、ちょっとはしゃいじゃってて。その声が、そう聞こえちゃったんじゃないですかね?」  スマホの画面が消えたことを茶化した友人が、おずおずと言った。俺は胸の中で、そんなわけあるか、と呟いた。そいつの声は、部屋のメンバーの中で一番低いのだ。ドア越しとはいえ、女子のものと聞き違えるはずがない。  先生は、そういうこともあるのか、と無理矢理納得したふうに曖昧に頷いてから、 「勘違いして、すまなかったな。ただ、消灯時間を過ぎてからも騒ぐのはよくないぞ。おやすみ」  申し訳なさそうに謝って、先生は教員用の部屋に戻ってしまった。
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