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願う
満月の夜。
「ここが夢幻山」
中学生になったばかりの少年、神谷衛は闇夜の恐怖に怯えながらも、夢幻山に足を踏み入れた。
前日に降った雨が地面を濡らし、木々の雫が体温と体力を奪う。
「ハア、ハア、ハア、ハア」
息が切れる。
足が、心臓が、重い。
胸が苦しい。
身体が寒い。
全てが怖い。
もう、この苦痛から逃げ出したい。
そう思う度に、大好きな美桜の笑顔を思い浮かべ、
逃げてはダメだ、僕が彼女を助けるんだ!
と折れかけた心を想いで支え、前へと歩を進める。
「やっと、やっと着いたぞ」
山頂に辿り着いた衛は額の汗を拭ったあと、お供え物を石碑の前に置いた。
急いで手を合わせて願う。
「彼女を、美桜さんを、僕の命と引き換えに救ってください!」
心優しき衛が心の底から願った時、突然、目の前に1人の男が現れた・・・。
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