第一章・・・心が呼吸できる世界 (第二節・・・はじめまして)

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「それじゃあ、これから彩珠(あじゅ)ちゃんを部屋に案内するけれど、  その前にこれを」  そう言った惺月(しずく)さんが持っているのは。  手首に身に付けるくらいのサイズの透明な輪っか。 「彩珠ちゃん、手を前に出して」  惺月さんがそう言った。  なので那覇が私の腕を掴んでいる手を離した。  ようやく那覇が私の腕から手を離してくれた。  そのことは、とてもほっとしている。  ……だけど、なぜだか寂しさも……。  って。  あれっ、私……。  ……思っているのか? 寂しいと。  那覇が私の腕を掴んでいた手を離したことを。  いや、違う違う。  ずっと離さなかった手を急にパッと離されたから少し驚いただけ。  さて、気を取り直して。  私は惺月さんの言う通り、手を前に出した。 「透明な輪っか(これ)を彩珠ちゃんに」  惺月さんはそう言って私の手のひらの上に透明な輪っかを乗せた。 「透明な輪っか(それ)を左の手首に身に付けてね」  やっぱり。  透明な輪っか(これ)はブレスレット。  感触は柔らかめ。  両手の指でつまんで軽く引っ張ってみると、しなやかに伸びる。  確かに伸びないとデザイン上、身に付けることは難しいだろう。  そして惺月さんに言われた通り、透明なブレスレットを左の手首に身に付けた。 「えっ……⁉」
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