第一章・・・心が呼吸できる世界 (第三節・・・秘密厳守)

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「それからね、彩珠(あじゅ)ちゃん、  もう一つ説明させてね」  だいぶ緊張が和らいだ。  そのとき惺月(しずく)さんがそう言った。 「『心が呼吸できる世界』(ここ)と現実の世界が繋がっている出入り口は  空澄(あすみ)くんと彩珠ちゃんが入った出入り口(ところ)だけではないの」  そうだったんだ。  てっきり私と那覇が入った出入り口だけだと思っていた。 「出入り口は  全国各地の空き地や野原や草原、そして公園に存在しているの」  なるほど。  確かに人が存在するのは私や那覇が暮らしている地元(ところ)だけではない。  だから出入り口が全国各地に存在する。  そのことは当然といえば当然のこと、なのかな。 「だけど、各地域から見える出入り口は一人につき一ヶ所だけ。  今、住んでいるところから近い空き地か野原か草原か公園のどこかになるの。  だけど必ずしも一番近いところに出入り口が見えるとは限らないの」  そうなんだ。 「詳しいことはよくわからないけど、 『心が呼吸できる世界』(ここ)と現実の世界を繋ぐにも 相性というものがあるらしくて、  ピッタリと合うところにだけ出入り口は存在するみたいなの」  そうか。  私の場合も出入り口が見えたのは、家から一番近い公園ではなかった。  少し遠くの公園だった。 「出入り口は数多く存在するけれど、  どこの出入り口から入っても、  みんな『心が呼吸できる世界』(ここ)にたどり着くの。 『心が呼吸できる世界』(ここ)は全ての出入り口に繋がっているから」  なるほど。  全国各地に存在する出入り口から入った人たちが『心が呼吸できる世界』(ここ)に集まってくるということか。
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