第一章・・・心が呼吸できる世界 (第一節・・・不思議な光)

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 時刻は十時を回ったところ。  多くの人が会社や学校で仕事や勉強をしている。  そんな時間に自分が学校外にいる。  それは、なんだか不思議な気持ちだった。  平日。  いつも当たり前のように過ごしていた時間。  その当たり前から離れてみる。  そのことは。  違和感がないと言えば噓になる。  だけど。  無理して走り続けて心が酸素不足になってしまう前に。  少しだけ立ち止まって。  しっかりと呼吸をする。  そのことは必要なことだと思うから。  私が向かったところ。  それは近所よりも少しだけ遠くの場所にある公園。  そこにしたのは。  その方が現実から少しでも遠ざかることができると思ったから。  よく知っている場所よりも、あまり知らない場所。  私も知らない景色。  そして私のことも知らない景色。  こういう気分のときは、お互い知らない方がいい。  公園の中に入って。  自販機でジュースを買い。  空いているベンチに座る。  今は六月の中旬。  すでに梅雨に入っている。  今日は梅雨の時期とは思えないくらいに快晴。  皮肉にも私の心の中の天気とは正反対。  私の心の中にはいやらしいくらいに雨がじとじとと降り続けている。  湿度もかなりあり、不快度指数がヤバいくらいに高い。  自然界の梅雨は時期が来れば明ける。  だけど私の心の中の梅雨は年中明けることはない。  そんな心の梅雨を抱えながらジュースを一口飲み「ふぅ」と小さく息を吐く。  そして、そのまま顔を上げた。  視界に広がるのは。  ベンチの周りにある木々が生み出している緑の葉たち。  それらがやさしく吹いている風に揺られてやさしい音を出している。  それは、まるで緑の葉たちが風に乗って歌を歌っているような。  その歌を聴いていると少しだけ心が安らぐような感じがする。  そう思いながらまた一口ジュースを飲んだ。  今日は晴れているので梅雨とは思えないくらいに暑い。  だけど私が座っているベンチのところは木陰があるおかげで暑さは少しだけ回避できている。  とりあえず。  この暑さ、なんとか乗り切ることができそう。
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