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黒帯少女は隠れオタク…!?
「たぁぁぁぁあ!!!」
私は積み上がった瓦を割った。
「ナツミ“先輩“今日も7枚割りですかww」
クラスメイトかつ幼なじみの波木が声を掛けてきた。
「何だ?その笑いは」
「なぁんでもありませーん」
眉を寄せた私を見て波木は笑いながら去って行った。
私は割った瓦を片付けながら自分の固く結ばれた帯を見た。
帯には金色の糸で一本線が入っている。
自慢じゃないが、私は黒帯、波木は茶帯だ。
同じ年齢と言っても空手道場に生まれた私とは違い、
三年前に入ってきた彼は小さい頃からこの道場に居る
私の同期達をどんどん追い越し、
今では空手界でも名の知れた大会常連者となっている。
しかし、そんな波木は人前だと何故か私の事を先輩と呼ぶ。
「ふぅ…。」
瓦を片付け終わり、私はふと明日の予定を思い出した。
(明日コミケ楽しみだなぁ)
それは一ヶ月前の事だった。
好きなイラストレーターさんが私の推しアニメの二次創作漫画をコミックマーケットで発売すると発表したのだ。
その為に貯めていたお年玉をかき集め、柔道の欠席届を出し…と挙げていった
らキリがない。
(ふふっ明日は作者さんにも会えるのかな。)
にやけた口角を慌てて抑え、誰かに見られていないかと辺りを見渡す。
すると後ろで型の練習をしていた波木と目があった。
波木はいつもの笑顔でこっちに微笑みかけてくる。
私は眉を上げて、『集中しろ』と目で訴えかけると、
波木は口を尖らせた。
その顔があまりにも幼く見え、同い年とは思えず吹き出す。
私は黒い帯を一層固く縛った。
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