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降りしきる雨と幼なじみ
「本当に申し訳ありませんでした。」
あの後、私は道場から結城さんを背中に担いで家まで運んで行った。
家のインターホンが無くて焦ってたら、
結城ちゃんがよく通るいつもの声で
「ただいま戻りましたー」
って言ってくれた。
そこまでは良かった。
ガラガラと戸が開いて、出てきたのは黒い背広を着た人相の悪…
いや、怖い顔したおじさんだった。
その人は私の事を見た瞬間、驚いた顔をし、殺意を纏わせて拳を顔面に突き出してきた。
訳もわからず、ギリギリのところでかわしたは良いものの、
結城ちゃんを背負ったままだと思うようには動けない。
一歩後ろに下がり、聞いた。
「急に打撃とは。何か気に触る事をしましたか。」
「お嬢を降ろせ。」
「ここで降ろす訳にはいきません。結城さんは足首を捻挫しています。」
「何?お前がやったのか。」
「私がやった訳ではありませんが、監視が足りなかった私にも非があります。」
「ならば、お前も悪い!」
そう言ってまた拳を突きつけてきた男性のこめかみに軽く手刀をお見舞いし、
『一体どんな家に住んでいるんだ』
と背負った結城ちゃんを振り返るとスースーと寝息を立てていた。
ガクッと力が抜けそうになったが一つ息をつき、また彼女を背負い直した。
「失礼します…」
そう言って背中に結城ちゃん、右手に男性という
なんとも狩りの後のような格好で
先程男性が出てきたドアを開くと、
とても大きな庭園の向こうの方に何人ものハワイのようなシャツが見えた。
先程より何倍も重くなった体で歩いていくと
向こうで一人私に気付いてくれた人が仲間を呼び集めている事に気がついた。
先程より早いスピードで歩いていき、玄関に着くと
幹部のような人が丁度やってきたところだった。
右頬にある大きな傷が自分の父親の
若い頃に投げ飛ばされたという傷に少し似ていて、
なんだか少し親近感が持てた。
幹部(これからはそう呼ぼう)は私に向かってこう言った。
「君は何組の刺客かね。」
シカク…資格…刺客。とっさに字が出てこなく、
やっと出た時には私はこう言っていた。
「一年四組です。」
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