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正月が明けたらコロナが極まった。
君の住む世界ではもしかしたらコロナ禍は収束しているのかもしれない。
でも世界線は無限に分岐している。君のいる世界線も僕のいる世界線も無数の可能性の中の一つ。
僕のいるこの世界線では新型コロナのサードウェーブは全く収まらずにサードウェーブEXとなった。――マジでヤバい。
テレビで「七割の方のオンラインでのリモート勤務をお願いします!」ってい言っていた政府広報も、今じゃもう「全員オンラインで働いてよ! お願いだからァァァーーーー!」と泣きながら叫んでいる。――マジでヤバい。
世紀末極まっている。まぁ、21世紀初頭なんだけどな。
ちなみに政府広報CMに出てる女の子が巨乳のアニメキャラだったので、女性性を性消費しているとネットで即炎上していた。オンライン通勤を頼むCMがオンラインで炎上。
まぁ、つまりは――オンラインだ。
そんなこんなで、とにかく僕たちはオンラインを強いられている。
という話をオンラインでしていたら、担当記者の恩来院精霊が大きく頷いた。
「全くですね、先生! 私も同感です! 今の時代、DX――つまりデジタルトランスフォーメーションが大切ですからね」
「……て、話聞いてた?」
僕が面倒くさそうに、返すと恩来院さんは「もちろんですよ! 先生!」と返してきた。
まったくもって調子の良い男である。
「そもそも君の名前は時代に適合しすぎているよ。本当にそのペンネームはいつ付けたんだい? 『オンライン奨励』なんて、すごい時機を得たペンネームじゃないか。感心するよ」
「え――、本名ですけど?」
「本名なのかよっ! すごいなっ! ご先祖さますごいなっ! 両親すごいなっ!」
僕は思わずオンライン越しに拍手を送った。
アバターが立ち上がってスタンディングオベーションだ。
オンラインで恩来院に。
「まぁ、生まれる家庭は選べませんからね。こればっかりは」
「オンライン申請で名前も変えられる制度もできるらしいよ?」
「へー、家庭裁判所の審判が必要だったと思いますけど」
「まぁ、最近は裁判所もオンラインだからね~」
「まぁ、裁判所も生産性向上しないとですしね~」
果たして裁判所は何を生産するのか? 謎が謎を呼ぶ。
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