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「ねぇお母さん。新しいお父さんはいつ来るの?」
「さあ、いつだろうね」
うちにあるカレー用ではないけれど、割と深めの皿によそった仄かに甘い甘い林檎とハチミツの薫りがする家庭料理。それも子供用に小さく切った野菜や豚肉がいっぱいのカレーライスと、その前に置かれたスプーンを両脇から挟むようにポテンと両手をついて美味しそうに覗き込み、ぴょんぴょん跳ねお尻を上下させてはしゃぐ娘に、ついついあたしの目尻が分かりやすくクーッと下がっていってしまう。
「お母さん!おいしい?ねぇ♪おいしい?」
「うん、美味しいよ♪」
「よかったー♪おいしいね♪」
あたしが一口分のカレーライスすくい、頬張るのを見るたびに小さな彼女はニコニコーッて微笑んで、エヘヘと笑いながら聞いてきたのがスゴク可愛らしく愛おしく感じた。
その間も暗い天袋の両眼はずっと、あたしを瞬きもせずに見つめている。
「ねぇ、今度来るお父さんは良い人だといいね♪」
「そうね」
そうだったらいいね。
あたしは娘にそう応えることしかできなかった。
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