黒いバナナ

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 結婚さえすれば、あの二人を見返してやれる。  ビールをぐいっと煽った。  でもダメだ。相手がいない。  またビールを煽る。ぐびぐびぐび。今度はもっと豪快に。 「っあ〜」  それに誰でもいいわけじゃない。私、この人に選ばれたのよ、と言えるくらいの見た目とか収入とかが、できれば欲しい。だってそうじゃなきゃ、あの二人を見返してやれない。  え? じゃ、愛は?  なくていいかも……。  だったらイケそうじゃない?  結婚相談所とか?  そういうところならたくさんの男性と出会えるし——。  あ、ダメじゃんそれ。だってそれ、愛が欲しい人が集まるよね?  私が欲しいのは、一度は結婚した、売れ残りのバナナじゃなかったという事実のみ。そこに愛は必要ない。  愛がなくてもいいから結婚して、愛がないから適当なところで離婚して、そうすれば私は、『値引きシールを貼られた黒いバナナ』から脱却できる。  なんだけど、そんな需要を満たしてくれる人って、どんな人?  魂胆をバラされたくはないから口は固くて、収入多めとなると仕事ができて、すれ違い生活歓迎だから多忙で、未婚の、ある程度イケメン。脅したり、見境のない人は論外だけど、おじさん臭さがなければこの際年齢は気にしなくていいだろう。  だけどいる? そんな都合のいい(ひと)。 「はあ……」  誰といるわけでもないお一人様だと思えば、ため息も遠慮なく出てくる。  やっぱりタレでも食べたいな、とねぎ間を追加で注文し、更に生ビールを煽った。 「っあ〜」
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