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「は〜さっぱりしたぁ」
ドアが開くか開かないかのところで聞こえた声に、さっきの気まずさは微塵も感じなかった。
体がさっぱりしたことで、心もさっぱりしてくれたのだろうか。それならそれで構わない。いや、寧ろ助かるくらいだ。別に忘れてもらって構わないような、勢いまかせのキスだったのだから。
「じゃあ、軽く何か食べるか? ヨーグルトとキウイがある。ああ、その前に水分補給も必要だな」
言いながら、ソファーの前に置き去りにしてあったペットボトルを取りに行き、まだキッチンの脇にぼうっと突っ立っていたひなたに手渡した。
「ほら」
「ありがとうございます」
にこっと笑顔を向けられた。
やはり、喉が乾いていたんだろう。
「ヨーグルトはどうだ?」
「はい、いただきます」
わかりやすく嬉しそうな顔をしている。好物を聞いたときには「カレーまん」と即答していたが、ヨーグルトも好物のひとつらしい。
「好きなのか?」
「えっ、あ、はい、ヨーグルト、大好きです」
「そうか」
一瞬丸くなった目は、言い当てられたことに驚いたからだろう。好物なんて一つとは限らないのだから、そう驚くことでもないのに。
「突っ立ってないでそこに座れ。今用意するから」
「はい……あのぉ」
何か言いたげな、あのぉ、だ。
「どうした?」
「さっき、しましたよね?」
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