▼純朴なキスを

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「は〜さっぱりしたぁ」  ドアが開くか開かないかのところで聞こえた声に、さっきの気まずさは微塵も感じなかった。  体がさっぱりしたことで、心もさっぱりしてくれたのだろうか。それならそれで構わない。いや、寧ろ助かるくらいだ。別に忘れてもらって構わないような、勢いまかせのキスだったのだから。 「じゃあ、軽く何か食べるか? ヨーグルトとキウイがある。ああ、その前に水分補給も必要だな」  言いながら、ソファーの前に置き去りにしてあったペットボトルを取りに行き、まだキッチンの脇にぼうっと突っ立っていたひなたに手渡した。 「ほら」 「ありがとうございます」  にこっと笑顔を向けられた。  やはり、喉が乾いていたんだろう。 「ヨーグルトはどうだ?」 「はい、いただきます」  わかりやすく嬉しそうな顔をしている。好物を聞いたときには「カレーまん」と即答していたが、ヨーグルトも好物のひとつらしい。 「好きなのか?」 「えっ、あ、はい、ヨーグルト、大好きです」 「そうか」  一瞬丸くなった目は、言い当てられたことに驚いたからだろう。好物なんて一つとは限らないのだから、そう驚くことでもないのに。 「突っ立ってないでそこに座れ。今用意するから」 「はい……あのぉ」  何か言いたげな、あのぉ、だ。 「どうした?」 「さっき、しましたよね?」
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