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店を出る頃には上機嫌の私が出来上がっていて、心なしか足取りも軽やかだったのは否めない。
後は条件に合う男の人が目の前にふらりと現れて、さらには結婚しよう、なんて迫ってくれたら言う事はないんだけど。
そんな妄想をしていたから、顔は緩んでいたに違いない。けれど誰に咎められることもない私は、お一人様なのだ。
ああでも、あの二人はやっぱり見返したい。明け透けな関係の友人だから余計に腹立たしいのかも。黒いバナナ認定も回避したいし。だけど、そんな丁度いい人が都合よく現れてくれるのは、漫画とかドラマとか、作り話の中だけなんだ。
そんなことわかってる。
こんな風に一人居酒屋を満喫して千鳥足で歩く女に、どこの神様がそんなチャンスを授けてくださると言うのか。
「くれないよね」
呟いて視線を上げれば、今から合コンよ、と言わんばかりに気合い十分フルメイクの、自分より明らかに若そうな女の子二人組とすれ違い、冷笑をいただいた。
金曜の夜に、たった一人で居酒屋から出て来た女が千鳥足で何が悪い。と思ったけど、なんだか泣きそうになる。
生理、近かったかな。
「石森?」
ふと聞こえた声。
視線を彷徨わせると、案外近いところにいたのは見知った顔だった。
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