まさか

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「あのさ、本当に飲み行くつもり?」 「もっちろん。俺このために今週頑張ったし。たまにはいいじゃん、同期だし」 「んー、まあ、同期ではあるけど」 「そうそう、あと、誰のおかげでミス防げたっけ?」 「うぐっ……えっと、その節はお世話になりました。でも、ミスは反省してるけどそれとこれとは」 「お、反省してるんだ。いい子いい子」  何の躊躇いもなく伸びてきた手が、無許可で後頭部を撫でる。  物凄い不快感とまではいかなくとも、全然嬉しくはない。 「ちょっとやめてよ。ちびっ子じゃないし」 「ええ? ちびっこいじゃん、よしよし」  確かに、吉永君のようにでっかくはありませんがね。でも、言うほどちっこくもない平均身長だし。  一歩、立ち位置を横にずらしてその手から逃れた。 「目立つのっ、吉永君は」 「俺? そうかなあ」  そうかなあ、なんて言いながら満更でもなさそうなのは、自分がモテることを自覚しているからなんだろう。  こんなところに突っ立っているせいで、さっきから何人もの女子の視線が吉永君に向けられている。隣に立っている私にまでついでの視線が飛び火して、迷惑。 「とりあえず行こ」  これ以上ジロジロ見られるのも嫌で、仕方なく吉永君を促した。 「おっ、やる気出た?」 「それはないけど」  どっちみち、コンビニかデパ地下か、その辺のスーパーでお弁当でも買うくらいの選択肢しかなかった。  すぐに帰ってもどうせ今夜は一人だし、吉永君はただの同期だし、何が何でも拒否しなきゃならない理由もないのかも。  必要以上に拒んで、勘違い女、なんて言われるのも嫌だし、お腹が膨れたらすぐ帰ればいっか。
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