5222人が本棚に入れています
本棚に追加
「焼き鳥うんまっ」
「いい食いっぷり。相変わらずだねえ」
「よく知ってるみたいな言い方やめてよ、キモイ」
「キモい?! 俺そんなん言われたことないのに」
いつもの居酒屋じゃないテーブル席。その向かいに座った吉永君が、組み合わせた両手の上に顎を乗せ、ちょこっと首を傾げてこっちを見ている。
絵にはなるけれど、甘い造りの顔でそんな仕草、私にはちょっと甘すぎる。
そう考えながら手にした串にかぶり付いた。
「うん、この砂肝もなかなか。吉永君も食べなよ」
「サンキュー。でもかわいい顔してガツガツ食べるよな、ひなたちゃんて」
「どうせガサツな女ですよ、悪かったね。でも美味しいから仕方ない」
「ガサツなんて言ってないって。そういうズレたとこもかわいいけどね」
「はいどーも」
吉永君の紡ぐかわいいは、挨拶。
居酒屋で言うなら「いらっしゃいませえ〜」と一緒。
だからその挨拶に対し、丁寧に腰を折る必要もないわけだ。
はあ。タレ目でガン見してくるから、あっさりしたものが食べたくなってきた。
「漬物食べたいな。頼んでいい?」
「どうぞ?」
「そう言えばさ、相談あるとか言ってたの、あれ嘘?」
「おいおい、嘘って決めつけ良くないっしょ」
「やっぱ嘘なんだ。すいませーん!」
片手を勢いよく上げると、自分より確実に若い男の子が走り寄って来た。大学生とかかな。なんだか犬みたい。かわいいって、こういう子のことを言うんだよ。
漬物と砂肝、手羽先も頼んじゃえ。
追加注文して、ジョッキのビールを煽った。
「っああ〜」
最初のコメントを投稿しよう!