まさか

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「っ?」  思わず振り返ると、恭介さんが私の方へ歩み寄ってくる。 「寝るんだろう?」 「はい」 「俺も寝る。そっちの灯りをつけて?」 「え!」 「真っ暗じゃぶつかるだろう、お前」 「あ、はいっ」  いや違います。  私が言いたいのは、寝るって、俺も寝るって、そこ!  心音がバクバク鳴りすぎて、こんなんじゃ絶対恭介さんに聞こえてるんじゃないかと思わずにはいられない。  だけど言われた通りにするしかなくて、ベッドルームの灯りをつけて、そそくさと大きなベッドに乗り上げた。  こうなったら、しれっと秒速寝落ち作戦しかない。寝たふりでやり過ごせば、戦意喪失間違いなしのはず。  とにかく、今日いきなりは無理だ。こうするしかないんです、ごめんなさい、恭介さん!  図々しくベッドに潜り込んで、恭介さんに背を向けるように横たわった。  なぜか今日に限ってやけに感じる恭介さんの匂いとか、めちゃくちゃ気になるけど気にするな、ひなた! 「おやすみなさいっ」  まだ灯りはついているのに早口でそう言って、目を閉じた。  リビングとベッドルームを仕切る引き戸の閉まる音がして、灯りが消えて、背中の方が少し沈んで、恭介さんがベッドに入ったのだとわかる。
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