まさか

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 恭介さんは、折り曲げた腕に頭を乗せて私を見つめていた。めちゃくちゃに優しい眼差しで。 「いいから目を閉じて」  そう言って今度は、私のお腹の辺りを布団の上から優しくトントン叩き出す。 「あの、なにしてるんですか?」  さすがに戸惑った。  私、幼児じゃないんですが。 「こうしたら、すぐに眠れるんじゃないか?」  やっぱり。  からかいを含んだ笑みだけれど、私だけを見つめているのが嬉しくて笑ってしまう。 「もう、それ、ちびっ子だけですよ。気持ちだけいただいときます、ふふっ」 「いいから。少しだけ試してみろ、ほら、目を閉じて」 「ふふっ、わかりました」  どう見ても優しそうな顔に見える人じゃない。その恭介さんが、その顔で本気でそう言うのがおかしくて、笑った顔がなかなか戻らない。  けれどそんな風にされるのすら嬉しくなってしまった私は、恭介さんの言う通りに目を閉じた。 「おやすみ、ひなた」 「おやすみなさい、恭介さん」  優しい声音にそう答えたけれど、こんなんじゃ寝られるわけない。だけど嬉しいから、少しだけトントンしてもらおう。  なんて思いながら、お腹に伝わってくるリズムを感じていた。
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