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「ぶはっ!」
急に解放したからか、ひなたから妙な声が上がった。
「怪我は?」
そう問えば、ふるふると首を横に振って見せる。
一応の安心をして、背中に隠すようにして振り返り、そこに突っ立っていた顔面蒼白の男を睨みつける。
情状酌量の余地はない。
「吉永、一体どういうつもりだ。ひなたは俺のものだと、知らないわけないよな?」
自分がこれほどに感情を隠せないタイプだとは知らなかった。
こうまで腑が煮え繰り返るのは、契約だから、夫としての役割を果たさなければならないからじゃない。
「えっと、俺たち同期なんで、そ、それで飲んでて、ね? そうだよね? それだけです!」
此の期に及んでもまだ自分の方を守ろうとする。下衆な野郎め。
背後にいるひなたも俺と同感なんだろう。背中の後ろから、ムッとした声で言い返した。
苛立ちが収まらず、吉永を睨んだままの目頭に力が入る。
ひなたの口から次々出てくる吉永の行為に、今まで感じたこともない野蛮な感情を抱いた。
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