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ひなたを問い詰めたい気持ちはあった。
どうして吉永と二人でいたんだ。俺がいない間に何かあったらどうするつもりだった。妻としての自覚がないのか、と。
だがそうできなかったのは、彼女と俺の思いが通じ合っていないのが原因だ。
婚姻届を提出した時点で戸籍上では妻となった。そうだとしても、それだけじゃ駄目だ。
心が繋がって結婚した相手でない事が枷となった。
好き合って結婚したならば、なぜ、どうしてと問い詰められたかもしれない。そうでなくとも事実、夫婦なのだ。連れ帰って、仕置きだと言って奪ってしまおうかとも考えた。
でも駄目だ。それじゃ吉永と同じじゃないか。
その考えが、沸騰していた俺の頭に冷水を浴びせかけた。
そんなやり方で縛っても、永遠にはならない。契約期間が終わるまでの間は大人しく腕の中にいてくれるかもしれないが、それもあと、たったの二ヶ月だ。
それが終わったらあっさりと解消されてしまう。俺たち二人の関係は、そんな容易い関係で終わってしまうのだろうか。
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