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ぐっすり眠っているひなたの左手をそっと持ち上げて、先日届いたばかりの安物の指輪をそっと嵌めてやった。
その薬指に唇を触れさせていたことは、俺だけの秘密だ。身じろいだひなたの喉から小さく漏れ聞こえた声に、動揺させられた事も。
胸の前に掲げた左手の指輪に右手で触れながら、はにかんだ表情で礼を言われたら、こっちまで嬉しくなってしまった。
安っぽい指輪だというのに。
でもまさか、幼子にするようなあんなことで本当に眠ってしまうとは。
そのせいで笑いが止まらず、小さな子供が可愛くてつい揶揄いたくなるような感覚で、笑いすぎてしまったかもしれない。
込み上げる笑いを必死に抑えようとはしたが、あんなに愛らしくむくれる顔を見せられたら、なんだかこうしている時間が今まで以上に大切に思えて堪らなくなった。
もっと甘やかしてやれば、そのうちポロっと言ってくれるだろうか。俺のことが好きだと。
新聞のこっち側でそんなことを考えていたとは、ひなたは気づきもしないだろうが。
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