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今思えば、どうしてあんな突拍子もない契約を受け入れたのか。ひなたに対して特別な好意を抱いていたわけでもないし、向こうもそうだっただろう。
ただ、仕事ぶりが真面目なところと、パッと花が咲いたような笑顔には好感を持っていた。
ちょっと席を立った隙にまでついそんなことを考えてしまうのは、ひなたへの思いを自覚してまだ日が浅いせいだろうか。
ただの好感が、どこかで唯一無二の好意に変わっていたのだが、それに気づいたのは出張での仕事を終えた直後だった。
自社の他工場への出張では、どうやっても帰れない距離でないにも関わらず、適当なホテルに一泊して帰るのが常だった。帰り際に「一杯どうですか?」と誘われるのはほぼ毎回のことだったし、以前はそれも楽しみの一つであったのだ。
それなのに、早く帰りたくて堪らなかった。
急いで帰っても、誰が待っているわけじゃない。だからそんな風に思ったのも初めてで戸惑った。
だがそんな戸惑いの中、早く帰りたくなる理由を探してみれば、答えはすぐに見つかったのだが。
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