▼ なぜか

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 久しぶりの恋だからだろうか。気を引き締めようと誓ったばかりなのに、今日はダメだ。  早朝出勤を何年も続けているのだから、ほんの少し見つめるくらいの時間は、席を立たずにする休憩と見なしてはくれないものだろうか、なんて。  馬鹿な事を考えてしまったと内省し画面に目を戻せば、昼休憩のチャイムが鳴ってしまった。  ハッとしたように顔を上げて壁の時計を見たひなたは、慌ただしくマウスを動かし、それから両腕をぐっと天井に向けて伸ばしている。 「ひなた」 「えっ、はっ、はいっ」  急に名前を呼んだからか狼狽えて、キョロキョロ辺りを見回してすぐこちらへやって来た。 「なんでしょう?」 「なんだと思う?」  ニヤリ微笑むと、キョトンと見つめ返された。  そんな表情だって可愛らしい。 「はい? わかりませんけど、何かやらかしました? 私」 「いや。昼飯、一緒に食べようかと思ったんだが、どうだ?」 「……え……はい。いいですけど」  急に染まった頬に触れたくなる。  だがデスクのこちらと向こうでは距離があって届かない。それにまだ、事務所の中だ。いくら昼休憩の時間でもそれはマズイ。それこそ吉永じゃあるまいし。 「でも私、持って来てますよ?」 「じゃあ俺は、下で買って来る。屋上にでも行くか?」 「はい! いい天気ですもんねっ」  ニコニコ笑って、天気がいいのがそんなに嬉しいのか。  全く、可愛いったらない。
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