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やっとの昼休み。チャイムと同時に席を立ち、フラフラと若干前屈みで腹部を押さえながら給湯室までやって来た。
すると教えてもいないのに英子さんがやって来て、温かいカモミールティーなんて優しさたっぷりの飲み物を淹れてくれるのだ。
もうずっと、私がここへ配属になって割とすぐから気がついて、毎回こうしてくれている。
正に心の母。
「もしかして今日から?」
「そうです、ぅぅ」
「そう……はいどうぞ」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ。毎回大変ねえ」
「ほんとに」
ここの給湯室にはテーブルと、椅子が二脚置いてあり、毎月この期間の昼休みはここに籠っている。屋上にも食堂にも、もちろん外にあるベンチなんかにも行きたいわけない。
ただ痛みに耐えながら仕事をこなし、終業のチャイムが鳴るとやっと許されたような気になってそそくさと帰宅する、そんな数日間をもう何年も続けている。
「はぁぁ」
ため息にも力がない。
一応持参したおにぎりも食べる気がしないほどだから、今日はなんだか酷いパターンのようだ。
ああでも、そろそろ薬を飲まないとまた痛みが。
不意に廊下から早足の靴音が響いて聞こえ、何かあったのだろうかと思ったが、今の私には何もできることはありません、ごめんなさい、と心の中で詫びた。
すると靴音がピタッと止まる。
まさか、何かあったのは私のせいでしょうか?
ああこんな時に……と泣きそうになりながらも顔を上げ給湯室の入り口を見遣れば、そこにはワイシャツ姿の恭介さん。
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