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「ひなた、どうした? 具合が悪いのか?」
「あ、大丈夫、です」
そう言うしかなくて、だけどグデっとテーブルに乗せた体をシャキッと起こすことまではできない。
「それのどこが大丈夫だ、熱か?」
「浅井課長」
見兼ねたのか英子さんが立ち上がり、ちょいちょいと手招きして見せる。そうして恭介さんに耳打ちしてしまった。
「だから大丈夫なんだけど、辛いのよねえ。浅井くん、もしかしてこんなに酷いとは知らなかった?」
「ああ、いや、すみません」と複雑そうな声は恭介さんのものだ。
英子さんの気遣うような言葉に、私の心も頷く。
ええ辛いですとも。まさか恭介さんにまで知られてしまうとは、なんだか恥ずかしいし。
「奥さん、ちょっと重いタイプなのよ。だからね……あらやだ、私お邪魔だったわね。じゃあそれ飲んで、あったかくしてるのよ」
いつもだったらずっとそばに居てくれる英子さんは、そそくさと給湯室を出て行ってしまった。
きっと、気を利かせてくれたんだろう。一応夫婦だから、私たち。
でもこの状態では会話すら普通にできない。
「恭介さん、私にはお構いなく。お昼、行ってきてください」
そう言って再び、テーブルに突っ伏した。
「お前は? 何か食ったか?」
「……まだ」
もう答えるのもめんどくさいのに。
「何か食わないと」
「いい」
「薬は?」
「まだ」
「昼飯は買ってきたのか?」
「んー」
「この黄色いのがそうか?」
「うるさいなあ、もうっ」
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