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最悪だ。なんてぞんざいな口の聞き方。いやもう、ぞんざいは通り越して失礼極まりない態度になってしまった。
放っておいてくれたらそれでいいのに。そんな風に思ってしまう。
心配してくれる人に対してなんて酷い、とはわかっているのに、腹痛とイライラとで自分をコントロールしきれない。
一応持参したおにぎりと薬は、お気に入りの黄色い花柄の巾着に入れてあるけれど、今はお腹が痛すぎてそれどころじゃないし、男の恭介さんになんてわかるまい。
苛立っていると、ピリピリカサカサ音がした。
え、何してる?
そう思って顔を上げれば、恭介さんが私のおにぎりを手にして開けているところだった。
私のなのに食べちゃうんだ。
「はぁぁ」
トン、と頭をまた腕の上に乗っけて、食欲もないのに思わずため息を零した。
すると、大きくて温かい手が宥めるように背中をさすり出す。
「んん」
恭介さんの手は、温かくて心地いい。
でも、私のおにぎりを勝手に食べようとしてるのをそんなんで帳消しにさせようなんて、酷い。
いくら夫婦らしく振る舞うとしても、そこはせめて訊いて欲しかったのに。
たかがおにぎり一つで狭い心だとは思いながらも、言葉にするのが億劫なだけでそう思わずにいられなかった。どうせ食べないんだけど。
こんな事で剥れるなんて、あまりにも子供っぽすぎて情けない。だけど自分の機嫌をうまく取ることができなくて、それが情けなさとイライラに拍車をかける。
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