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「ひなた、ほら、辛いだろうが少しは食べないと」
そう言われて、首だけ捻って恭介さんの方へ顔を向ける。
おにぎりが口元に近づいてきて、「薬を飲むんだろう? だったら少し食え。少しでいいから」なんて気遣わしげに言うから、更に首を捻って、視線を、おにぎりより上にある恭介さんの顔まで移動させた。
どうしてそんな困った顔をするの。
どうしてそんな優しくするの。
どうして、結婚なんかしてくれたの。
目の奥が熱くなったのにも気づけないくらいの速度で、湧き出た涙が零れていた。
「おいっ、どうした? 泣くほど痛いのか?」
焦った様子で、だけど背中をさすり続ける手を止めようとはしない。温かで優しい手のひらの感触が余計に私を泣かせる。
だけど、どうして泣いているのか自分でもよくわからない。ただ、生理中の感情は上手くコントロールできないようだと、最近理解し始めたところだった。
なんでもない時に泣けてきたり、泥沼に埋まっていくように気が重くなったり。三日目くらいになると徐々に復活してくるのだが、それまでがなんとも酷い。
結局何も言うことができなくて、涙まみれの目で恭介さんを見つめるだけだった。
「ひなた、今日はもう帰るか? いや、そんなんじゃ帰るに帰れないか。ああ、どうしたらいいんだ。代わってやりたいが……」
「……プッ、くくっ」
突然笑いが込み上げたのは、代わってやりたい、なんて言った恭介さんのせいだ。
「……なんだ」
ものすごく怪訝な顔をして、恭介さんは隣の椅子に腰掛けた。
そりゃそうだ。今しがた泣いたと思って心配した相手が、突然笑い出すのだから。
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