ときめき

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 心配してくれているのなら、やっぱり嬉しい。 「薬を飲んで眠ったら、少し楽になりました」  波はまだ、来るだろうけれど。 「そうか、よかった」  照れくさくてちょっと笑いながら、恭介さんの手を反対の手でそっと外した。  立ち上がって、肩からジャケットを外す。  すると恭介さんも立ち上がったので、そこで小さく頭を下げてジャケットを差し出した。 「ありがとうございました。あったかかったです」 「そうか」  無事返せたことにホッとして微笑むと、渡したジャケットが高いところまで持ち上げられた。 「だったらお前が羽織ってろ。腹に巻いてもいいし」  そんな言葉と共に、恭介さんのジャケットが私の頭上を通過して肩に戻ってくる。 「え? いやそんな、恭介さんのだし」 「冷やさない方がいい。英子さんも言ってたじゃないか」 「でも、あ」  そこで昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴って、「先に行く」と言いながら、恭介さんはあっという間に給湯室を出て行ってしまった。  どうしよう、なんて一人もじもじ困っている暇はない。  私も早く行かなきゃ!
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