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恭介さんへの連絡は、翌日、日曜の昼に済ませた。
友人たちに会って欲しいとメッセージで頼めば、『了解。必ず行く』と返事がきたので安堵した。
夜になり、体調もほぼ復活。それで木、金の自分の言動を振り返ってしまい、今更頭を抱えている。
泣いたり笑ったり拗ねたり、それを全部、ただの上司に戻る約束の相手にしてしまったのだ。
なんてこった。
枕を抱えてため息を吐いて、突然鳴ったスマホの音にビクッと体を震わせた。
手に取り画面を見れば、恭介さんの名前。
どうしよう。でも、出ないわけにもいかない。
無視なんてできないし、声も訊きたい。
躊躇ってから、結局電話に出た。
「もしもし」
『ひなた? 俺だ。今、話せるか?』
「はい」
耳元に聞こえるのは機械を通した恭介さんの声なのに、低く静かな声だからか心地いい。
初めての電話だった。
いつもなら二人で過ごす週末を別々に過ごした寂しさより、声を訊けた喜びの方がもう大きかった。
片思いって切ないけれど、こういうときめきは恋していればこそかもしれない。
恭介さんは私の体調を気遣ってくれて、もう大丈夫そうだと言っているのに、ゆっくり休むんだぞ、とまだ気を遣ってくれた。
ほんと、心配性で優しい人だ。
それから、来週の金曜は遅れそうだが必ず行くから安心していいと。
言葉で、恭介さんの声で訊いたらものすごく安心できた。たとえそれが契約中の責任感からであったとしても、そう言ってくれたのが嬉しい。
そうしたら、突然諦めがついた。恭介さんに向かってしまった心を急に進路変更できるわけもないのだから、と。
こうなったら最後までとことん好きでいて、できれば恭介さんにも、契約終了までに好きになってもらえたらいい。そんなに簡単にはいかないだろうけれど。
魔の三日間が終わるからか、やっと楽観モードが復活だ。
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