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美保が慌てて席を譲ったことで、私と恭介さんとが隣同士、その向かいに女三人が並んで座ることになった。
恭介さんの飲み物がない事には、美保がすぐに気付いて対応してくれた。
私がやるべきだったな、と反省しつつ美保にお礼を告げると、隣から声を掛けられたので顔を向ける。
「ほら、ひなたにも」
「え……」
差し出されたのは、三人に手渡していたものより一回り以上大きな花束。
さっき皆に配った紙袋とは別に大きな袋が見えたのだが、それにこの花束が入っていたのか。
嬉しいけれど驚きが勝って、うまく言葉が出せない。
「ひなたは花より団子か?」
揶揄いを含んだ声だって、怒る気にはなれない。
「そんなことっ、もちろん花も好きです」
「そうか、よかった」
好きな人から柔らかな笑みと花束とを渡されて、嬉しく思わない人間なんていないだろう。
暖色系の色合いが賑やかで、それでいて派手過ぎず、ほっこりするような花束は大きさの割に可愛らしくて、眺めていると笑顔になれる。
「ちょっとちょっとお、見せつけるじゃないひなた!」
「ほんとほんと、愛されてるう!」
「いやあ、はは〜。ありがとうございます、恭介さん」
恥ずかしくて笑ってごまかしたが、もうほんと、愛されてるとずっと錯覚していたくなるような演出に感動すら覚えた。
仕事もできるそこそこのイケメンと結婚して、利里亜と花乃に自慢できればそれでよかった。売れ残りのバナナじゃなかったのよ、と。
なのになんだろう、この複雑な心境。
初めは確かにそんな軽はずみな気持ちだったのに、実際こうして恭介さんを紹介して、こんなことまでしてもらって、こんな風に友人たちからうっとり見惚れられていると、ちょっと。
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