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「ちょっと二人とも、ジロジロ見過ぎだから」
「いいじゃない、減るもんじゃないし」
「そうそう」
おっさんか。減るし!
ここぞと自慢すればいいのだけれど、恭介さんの色香にやられていそうな二人の表情を見ているのはどうも嫌で、自慢したいのに早く帰りたい、相反する心境だ。
「あの、ひなたのどんなところが好きですか?」
突然、興味津々と言った様子で利里亜が訊ねる。
顔を覗き込まれた恭介さんがバトンでも渡すようにこっちを見るから、思わず目を合わせてしまった。
数秒間見つめ合うことになってしまい、どうしたって顔が熱くなった。
おかしいな。前はこんなじゃなかったのに、好きだと自覚した途端、こんな風にじっと見られたらそれだけで気恥ずかしくてたまらない。
目の前にあるカンパリオレンジの入ったタンブラーは、ちょっぴり汗をかいている。それを持ち上げて、また酔っ払わないようちびちび口に含んだ。
「そうだな…………」
何を言われるんだろうなんて期待はそもそも不要だった。
まあ仕方ない。そもそもお互いを好きになって結婚したんじゃないし。契約だし、どうせ離婚するし、いいとこ一つも思い浮かばないのはわかってる。自分でもそうだから。
だけど、嘘でいいから何か言ってくれたらいいのに。そんなの適当で構わないのに。
そう思ったら、テーブルに視線を落とすしかなくなった。
やっぱり切ないな、片思い。
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