あなたの思い、私の思い

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 ソファーに倒れている。 「申し訳ないが明日は大事な用があるので、今日はこれで」  恭介さんがそう言ってくれたおかげで早く帰って来られたから、殆ど酔ってもいないし、まだ夜の九時にもなっていない。  それなのに随分疲れた感じがするのは、嘘がバレないか、それが気になって仕方なかったからだろう。 「疲れただろう。紅茶でも淹れようか」  そんな言葉につい甘えて、ソファーに倒れ込んでしまった。  こんなことだから余計に女として意識してもらえないのかもなあ。なんて思いつつ、ここにグデンと寝そべるのをやめられないダメ女だ。  だって、いつの間にかこのソファーは私の大のお気に入りで。 「ひなた、紅茶だぞ」  いい香りに誘われて体を起こす。 「ありがとうございます。恭介さんも疲れましたよね」  両手でしっかり受け取って、隣に腰を下ろした恭介さんに顔を向けた。 「まあ、それなりにな」  おどけたように肩を竦めて見せる仕草だって、かっこいい。 「すみません」 「ん? 何が?」 「なんかもう、全部です」 「ははっ、そうか……でも夫婦なら協力し合うのは当たり前だろう? いいんじゃないか? これくらい」  こんなに色々迷惑をかけまくっているのに、恭介さんにとってはこれくらい、なんだ。  なんかもう許容量がありすぎてほんと、神様?!
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