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紅茶の香りを吸い込んでから口をつけると、いつもと違って甘かった。
「ん、甘い」
「蜂蜜を入れてみたんだ」
「美味しいです。いいですね、これ」
「そうか。蜂蜜は疲労回復にもいいから」
恭介さんの声を訊きながら飲み込んだ温かな紅茶が、お腹の中へ流れていって疲れを癒してくれる気がした。
「へえ、そうなんだ。あ、もう回復してきたかも、な〜んて、へへっ」
「そうか」
私の冗談を微笑みで受け止めた恭介さんは、手にしていたカップをテーブルに乗せた。そうして私のカップにまで手を伸ばし、取り上げてしまう。
「あぁ、まだ飲んでるのにぃ」
キス、かな。
このソファーで寛いでいると、なんとなくそうすることが多いような気がして。
だからそれ以上、何も言えなくなってしまう。
恭介さんの片手はソファーの背、私の頭の後ろにあって、反対の手で髪を梳かれた。その手を頬に添えられて、恭介さんと向き合う角度に固定される。そのまま親指で唇を拭われて、閉じていた唇から力が抜けた。
緩く開いてしまった唇を見つめるせいか、伏し目がちになった恭介さんの奥二重の目。
それが近づいてきたら、やっぱり目を閉じてしまう。
だって今は、夫婦の時間だから。
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