あなたの思い、私の思い

13/17

5222人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
 可愛いとか、誰のものにもなっていなくてラッキーだとか言われた。  そういう言葉がかなり嬉しかったのは間違いないけれど、もっと欲しい言葉は聞かされていないと思う。  何度思い出そうとしてもやっぱり、絶対に言われていない。  好きだなんて。  だったら何? 体の関係を求められてる?  それなら納得がいく。  今までの優しさや、今日見せてくれた友人たちへの対応には、報酬があって当然と思うほど助けられているのだから。  だからその報酬にと望まれたら拒めない。  こんな自分勝手な契約を持ちかけておいて、こんなにも恭介さんを好きになってしまった私には。 「わかりました。今日だけなら、一度きりなら好きにしてください。忘れますから」  意を決して告げた言葉に、恭介さんは眉根を寄せる。 「何のことを言ってるんだ」 「だって、そういうことでしょ? こんな大したことない体でよければ一度くらい」  恭介さんの視線が一瞬下がって戻ってくる。 「待て、そういう事を言いたいんじゃない」 「だって! 他にどう解釈すればいいのかわからないんだもんっ!」  大きな声を出してしまった。 「……そうか。わかった」  何かを覚悟したような顔で、恭介さんは小さく頷いた。  全然わからない。恭介さんが何をわかったのか、私がどう解釈すべきなのか。  眼光鋭く見つめられ、何か途轍もなくマズイことを言ってしまったのかもとは思ったが、それでもそれが何なのか、ちっとも話が見えてこないままだ。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5222人が本棚に入れています
本棚に追加