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可愛いとか、誰のものにもなっていなくてラッキーだとか言われた。
そういう言葉がかなり嬉しかったのは間違いないけれど、もっと欲しい言葉は聞かされていないと思う。
何度思い出そうとしてもやっぱり、絶対に言われていない。
好きだなんて。
だったら何? 体の関係を求められてる?
それなら納得がいく。
今までの優しさや、今日見せてくれた友人たちへの対応には、報酬があって当然と思うほど助けられているのだから。
だからその報酬にと望まれたら拒めない。
こんな自分勝手な契約を持ちかけておいて、こんなにも恭介さんを好きになってしまった私には。
「わかりました。今日だけなら、一度きりなら好きにしてください。忘れますから」
意を決して告げた言葉に、恭介さんは眉根を寄せる。
「何のことを言ってるんだ」
「だって、そういうことでしょ? こんな大したことない体でよければ一度くらい」
恭介さんの視線が一瞬下がって戻ってくる。
「待て、そういう事を言いたいんじゃない」
「だって! 他にどう解釈すればいいのかわからないんだもんっ!」
大きな声を出してしまった。
「……そうか。わかった」
何かを覚悟したような顔で、恭介さんは小さく頷いた。
全然わからない。恭介さんが何をわかったのか、私がどう解釈すべきなのか。
眼光鋭く見つめられ、何か途轍もなくマズイことを言ってしまったのかもとは思ったが、それでもそれが何なのか、ちっとも話が見えてこないままだ。
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