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「え、もしかして、ペット的な?」
「まさか。ちゃんと、女性として見てるよ」
手を、握られた。
「お皿割っちゃったりとか、ドジなのに」
「そんなの可愛いもんさ。放っておけないからつい構ってやりたくなる。手のかかる子ほどかわいいとはよく言ったもんだ」
指の付け根を太い親指で撫でながら、やっぱり笑っている。
言われているのは過保護気味なセリフなのに、嬉しいなんて思う私は子供なんだろうか。
でもそこで、気がついた。
「恭介さんて、尽くしたいタイプなんですか?」
「どうだろうな。過去にそう思った覚えはないが、ひなたにならそれでもいい。寧ろそうしたいのかもしれないな。こんな男、嫌か?」
自嘲気味の笑みだって簡単に見惚れるほどかっこいいのに、そんな人が本気でそんなことを?
「嫌じゃないけど、本当に、ほんっとーに本気にしていいのかなって」
「突拍子もないことを言い出すくせに妙に疑り深いんだな」
「だって……」
「本気にしてくれて構わないよ。人は誰でも、誰かに愛されていいんだから」
愛されていい。
その言葉が胸に刺さった。
だって、何となく違うとか好きじゃなくなったとか、そんなことばかり言われて、そうでない友人たちと自分とを比べて惨めになっていたから。
「自信を持っていいんだぞ? ひなたは元気が取り柄じゃなかったか?」
恭介さんの笑顔が、私を救ってくれるような気がした。
「さあ、ひなたの気持ちも訊かせてくれ。俺にだけ告白させて放置する気じゃないだろう?」
そう言われて思った。
ああ、私の気持ちなんてとっくにお見通しだったんだ、と。
もう、ただの上司と部下には戻れない。いや、戻りたいなんて、もうずっと前から思っていなかったのは私も同じだ。
だから、恭介さんの方に体ごと向き直った。
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