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やけに嬉しそうな顔してるなあ、とは思った。唯一既婚者の美保と隣り合って座った私の向かい、そこに並んだ利里亜と花乃の顔が、さっきからずっとニヤケっぱなしなのだ。
久しぶりに会ったから? なんて思っていたけれど、全然違った。乾杯すらしないしないうち、唐突に告白は始まった。
「えー実はー。私、結婚します!」
「えー! 実は私も!」
利里亜の宣言に花乃まで続く。
まさかそんな報告があろうとは予想もしなかった私は、盛り上がる二人のテンションについていけない。
「え、ちょっと待って、二人一遍に結婚しちゃったら、私だけ置いてきぼりじゃん」
「じゃあひなたも結婚する?」
花乃が微笑んだ。
「誰と……」
「誰って、良さげな人と?」
「どこにいんの?」
「さあ?」
どことなく勝ち誇った表情に見えてしまうのは、二人の顔があまりに整いすぎているせいだろうか。それとも、相手もいないじゃないか、と自分がいじけた気持ちになっているからか。
「て言うか、全然晩婚じゃないよね? むしろ早くない?」
「早い? 全然早くないって。ひなたがのんびりしすぎなんだよ」
「ええっ、だってまだ二十六だよ? そんなに焦らなきゃマズイ歳だっけ?」
「まだなんて言ってたらすーぐ三十超えちゃうよ? 晩婚なんて言われてるけどさ、実際結婚ラッシュは二十六、七歳辺りなんだから」
「そうなの?」
隣を見ると、美保も困ったように笑う。
知らなかった。垂れ流される情報を素直に鵜呑みにしていたから、三十近くなった辺りで結婚を意識し始めたっていいくらいなのだとばかり思い込んでいた。
晩婚なんて言ってるの、誰?!
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