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胸のところは掛け布団で隠している。でもこれ以上布団が濡れないように、ちょっと肌から浮かせて。
「きゃあ!」
それを突然引っ剥がされたから、当惑するしかない。
露わな胸と、零れた水が曝け出されいたたまれないのに。
なのに躊躇いもなく、許可さえなくそこに顔を寄せた恭介さんが、やっぱり唇でその水を拭って、なぜか胸の中心まで舐り始める。
「ちょっ……ぁあ」
どういうつもりなのかわからないが、這い出した手を止めなければ、と腰の辺りで蠢く恭介さんの手を押さえた。
「ダメッ」
「何が?」
「そ、それ」
「どうして?」
「どうしてって……」
胸に顔を寄せたままこっちを見上げるから困る。
「ほら、そんなトロンとした目で見るくせにダメなんて言われても、説得力ないな」
「ええっ、でもっ、今日はもう」
……十分です、はいぃ。
「俺はまだ大丈夫。三十一はそんなにオヤジじゃないぞ?」
どうやらその気だったらしい。
「おっ、大人気ないっ!」
「たまには童心に返るのもいいな」
「童子はこんなことしませんっ」
「夢中にさせたのはひなただ」
「っ…………」
しれっと言われた。
そんなことを言われたら、何も言えなくなる。思考停止させられて、口だけがパクパク動いて。
だけど知って欲しい。
私だって、本当は同じ気持ちだってことを。
「ずるいっ、恭介さんだって、夢中にさせてるくせにっ」
両手を伸ばして恭介さんの頬を挟んで、言ってやった。
「恭介さんがすき、もうどうなってもいいくらい、だいすきっ」
それで自分からキスするつもりだった。
でも一瞬、恭介さんの目頭に力が入って、それに気を取られていたら先を越された。
「ん!」
頭の後ろを抱き込まれ、背中を恭介さんの腕にきつく抱かれる。
そのままぎゅうぎゅう抱きしめ合って、また二人してベッドに倒れこんだ。
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