マリッジピンク

6/15

5221人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
 胸のところは掛け布団で隠している。でもこれ以上布団が濡れないように、ちょっと肌から浮かせて。 「きゃあ!」  それを突然引っ剥がされたから、当惑するしかない。  露わな胸と、零れた水が曝け出されいたたまれないのに。  なのに躊躇いもなく、許可さえなくそこに顔を寄せた恭介さんが、やっぱり唇でその水を拭って、なぜか胸の中心まで舐り始める。 「ちょっ……ぁあ」  どういうつもりなのかわからないが、這い出した手を止めなければ、と腰の辺りで蠢く恭介さんの手を押さえた。 「ダメッ」 「何が?」 「そ、それ」 「どうして?」 「どうしてって……」  胸に顔を寄せたままこっちを見上げるから困る。 「ほら、そんなトロンとした目で見るくせにダメなんて言われても、説得力ないな」 「ええっ、でもっ、今日はもう」  ……十分です、はいぃ。 「俺はまだ大丈夫。三十一はそんなにオヤジじゃないぞ?」  どうやらその気だったらしい。 「おっ、大人気ないっ!」 「たまには童心に返るのもいいな」 「童子はこんなことしませんっ」 「夢中にさせたのはひなただ」 「っ…………」  しれっと言われた。  そんなことを言われたら、何も言えなくなる。思考停止させられて、口だけがパクパク動いて。  だけど知って欲しい。  私だって、本当は同じ気持ちだってことを。 「ずるいっ、恭介さんだって、夢中にさせてるくせにっ」  両手を伸ばして恭介さんの頬を挟んで、言ってやった。 「恭介さんがすき、もうどうなってもいいくらい、だいすきっ」  それで自分からキスするつもりだった。  でも一瞬、恭介さんの目頭に力が入って、それに気を取られていたら先を越された。 「ん!」  頭の後ろを抱き込まれ、背中を恭介さんの腕にきつく抱かれる。  そのままぎゅうぎゅう抱きしめ合って、また二人してベッドに倒れこんだ。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5221人が本棚に入れています
本棚に追加