マリッジピンク

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 昨夜、ベビードールという名のヒラヒラしたものしか身に纏わず眠ってしまった私は、素肌に吸い付く濡れた唇の感触で目を覚ました。  私の肌に唇を寄せるその人の短い髪を撫でながら、顔に似合わずおはようのイチャイチャでもしたいのだろうかと呑気に構えていたのだが、すぐに危機感を覚える。  きっと、あのベビードールのせいだ。  朝だからとか、昨日したからとか、お腹すいたとか、何を言っても「そうだな」と流されて向き合ってなんかくれない。  どんな上司だ。これが職場でのことならすぐに解決策を探してくれるというのに、プライベートではなぜそうならないのか。  クールな人だと思っていた上司は、案外世話焼きで、予想外にスキンシップを好むタイプだったらしい。  それで結局楽しんでしまった私も、人のことは言えないが。 「なんか食べたい」  ベッドの上でよろよろと体を起こした私の傍には、そんな展開を引き起こす原因となったベビードールが所在なく丸まっているだけだった。  さすがにそれをもう一度着る気にはなれず欲求だけ伝えると、恭介さんがキッチンへと移動した。  その隙に、玄関へと繋がるドアから急いで脱衣所へ走る。裸で、だ。  回遊式がこんなところで役立つとは。  まだ数回しか泊まっていないのに、もうすっかりこの家で過ごすのに慣れている自分は、図々しいのか順応性が高いのか。  勝手にシャワーを済ませて着替えてキッチンへ行くと、恭介さんが朝食を用意してくれているところだった。  もうここ、天国かな?
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