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ダイニングで向かい合って二人で朝食を頂いていた。
今日の味噌汁は豆腐にわかめ。シンプルながら出汁が効いて美味しいなあ、なんて思いつつ味噌汁を啜る。
向かいに座る恭介さんは、すっかりいつも通りだ。朝から過剰な接触を求めて来たとは思えないほどに。
「恭介さん」
「ん?」
「契約のことなんですけど、どうします? 十二月で離婚の予定でしたけど、私たち」
「そんなの、もう解消すればいいだろう」
「解消…………」
契約内容は、三ヶ月の結婚生活の後に離婚するというもの。それを解消するとなると——。
「えっ、もう離婚?」
「違うだろう。離婚をやめる。結婚は、このまま続けたらいい」
「え……それだと、本当に私が奥さんになっちゃいますけど、わかってます?」
奥二重のあの目をじっと見つめた。
だって、恋愛と結婚は違うとか、よく言うじゃない。今はお互い好きだと確かめ合ったばかりだからいいけど、本当に結婚するとなると違うんじゃ……?
そう思ったのだが。
「もちろん」
即答だった。
「本当に? 後悔しません?」
「男に二言はない……ひなた」
きっぱりと言い切られ、名前を呼ばれて背筋が伸びる。
「はいっ」
「幸せにする。俺と結婚してくれ。契約なんかじゃなく」
「え……」
ダイニングテーブル越しの恭介さんは、至って真剣な表情だ。
多分プロポーズ。プロポーズですよね? これ。
突然すぎて言葉を失って、真正面から私を見つめているキリッとした顔が、歪む。
「え、じゃないだろう? どうする? 答えが出ないんなら、契約通り離婚するのか?」
「やっ、やだっ、離婚しない! もう恭介さんしか好きになれないのに……」
『離婚』だなんて言葉に煽られて焦った私は、気がつけばとっても恥ずかしいことを口走っていた。しかもそれは本音で。
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