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結婚式は、やらないと公言してしまったのだが、恭介さんにどうしてもと押し切られ、親族のみを招いてのこじんまりとした挙式だけをすることに決めた。
これもできるだけ早く詳細を決めなければならないが、とりあえずはこの荷物を片付けないと。
「ひなた、そっちはどうだ?」
キッチンの片付けをしてくれていた恭介さんに訊ねられ、苦笑する。
「えー、どうでしょう……大変なことになってますけど」
これでも随分荷物は減らしてきたと思うのだが、そもそも片付けが苦手なので全く捗らない。
朝からずっとしていたはずの片付け作業は、いまだ終わっていなかった。
「ああ、ああ、世話がやけるなあ、全く。俺が手伝ってもいいのか?」
そう言いつつ、私の目の前に並んだダンボールの中身を適した場所に収めていく恭介さん。
スーツ姿じゃないラフな服装に下ろしたままの前髪は、職場とはだいぶ印象が違って、クールというよりは優しく見えたりなんかして。
これからは毎日一緒に居られるから、そんな姿も見放題、なあんて思えばニヤけてしまった。
「なんか、すみません。でも助かります! ありがとう、恭介さん」
「ほら、自分の物なんだから、ちゃんとしまった場所を覚えておくんだぞ?」
「はいっ」
恭介さんに助けてもらったおかげで作業はどんどん進み、あとはクローゼットに服をかけるだけとなった。ハンガーに掛けた状態で運んでもらったから、これはあっという間に終わりそうだ。
服を取り出す恭介さんから受け取って私が掛けていく流れ作業もそろそろ終わりそうかな、と思った頃。
「ひなた、これもそこに掛けるのか?」
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