マリッジピンク2

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 お風呂から出てきた恭介さんに促され、入れ替わるようにバスルームへ向かった。  湯船に浸かると、朝から引越しの片付けを頑張った体の強張りが解けるように和らいだ。  しっかり温まって浴室を出て、髪と体を拭いて、そこで気がつく。  パジャマがない。  確か棚の空きスペースに置いたはずなのに、そこにあったのは、あのベビードール。 「ええ、なんで……?」  まあ、そんなの訊かなくてもわかってる。それに犯人だって。  仕方なくベビードールを手に取ると、似たような生地の小さな物体がはらりと床に落ちて、それを拾い上げると、温まった体がジワリと汗ばんだ。 「もう……めっちゃ透けてるし」  私の所持品でない、ということは、恭介さんが買ったのか?  店頭になんか行かなかくても好きに選んで購入できる。便利な時代というのは、時に困ったことにもなるらしい。  恭介さんて、ああ見えて中身は普通にエロい男の人なんだ。知らなかった一面を知れたのは嬉しいのだが、こういう事はちょっと恥ずかしい。  仕方ないのでそれを身につけ肌を保湿し、髪を乾かした。ホカホカに温まったから、案外この格好でも寒くはないし、レースやシフォン素材がなんだか贅沢な気分にもさせてくれたから、これはこれでいいのかも。  そもそもベビードールとはこうやって使うものだと美保が教えてくれたのは、恭介さんとの関係が変化したことを連絡した後だった。  私の報告にとても驚いてはいたけれど、同じくらい喜んでくれたのが嬉しかったっけ。  けど、髪を梳かして鏡に映った自分を改めて眺めたら、急に恥ずかしくなってきた。  この格好でリビングへ行くことにだけじゃない。今から起こりそうなことを、予感して。
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