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途中立ち寄ったコンビニで、温かい飲み物を買って車に戻った。
「恭介さん、疲れてません?」
「ああ、大丈夫。もうすぐだから」
運転席の恭介さんがエンジンをかける。
買ってきたもので喉を潤して、シートベルトに手をかけたところでそれを制止した。
「あ、ちょっと待って、ちょっとだけ向こう向いてください」
「ん?」
「いいからいいから」
私が指差した運転席側の窓の方へ体ごと向いてもらう。
向けられたのは大きな背中とがっちりした肩。
今日はスーツでなくカジュアルな装いのその肩に手を置いて、優しく揉み解す。
「運転お疲れ様です」
「おお、いい気持ちだ」
静かに肩を揉みながら、こういうの、おばあちゃんになってもやってあげられたらいいな、なんて妄想する。
数十秒くらいするとお礼を言われ、短すぎるマッサージタイムは終了した。
もっと恭介さんに喜んでもらいたくて、バッグの中を手で探る。
「恭介さん、チョコレートもありますよ、ほら」
「ひなたは食いしん坊だな。いつも持ち歩いてるのか?」
「違いますよっ、これはさっき買ったじゃないですか」
お金を払ってくれたのは恭介さんなのに、気づいていなかったなんて、意外とぼんやりさんなところもあるらしい。
「そうか」
「これ……あ〜ん、します?」
かなり恥ずかしかったが、やってみたい衝動に負けて言ってしまった。もう顔はニヤニヤしまくりで。
恭介さんがどう答えるのか、恥ずかしいから勘弁してくれなんて言われる可能性大だが、期待を込めて上目遣いに見上げ答えを待つ。
大きく眉根が寄せられたのを見て、やっぱりダメか、と諦めかけたのだが。
「恥ずかしいのも思い出になりそうだし、やってもらうか」
まさかのOKにテンションが上がる。
「やったあ! ふふん」
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