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途中のお蕎麦屋さんで食事をしてから、新居に帰りついた。
ちょっと、まだ玄関ですよ、なんて言いながら始まったキスが終わらずベッドに組み敷かれているのだが、まだ午後の三時過ぎ。
「愛してるよ、ひなた」
「私だって」
お互いバカみたいに好きだの愛してるだの言い合って、まるで踊るようにベッドに倒れ込んだ私たちは、ケラケラと笑っていた。
官能的とは程遠い空気だけれど、普段真面目な課長である恭介さんがこうやって戯れてくれるのは、私だけに見せる特別な姿なんだと思えば、胸からキュンキュン音が聞こえてきそうだ。
「わあっ! あははっ! 恭介さん、だあーいすき」
「まるで酔っ払いだな」
「酔ってますよ?」
私を見下ろしているその顔は笑顔。
だから、何の不安もなく笑顔で見上げられる。
「今日は飲んでないだろ? それとも車に酔ったのか?」
「違いますよ。あの夜からずっと、多分酔ってたんです、恭介さんに……なんちゃって! へへへ」
恥ずかしくて最後はごまかしたが、きっと、本当にそうだったんだと思う。だから衝き動かされるように声をかけたに違いない。
そう、思ったままを口にしたのだが、なぜか恭介さんから急に笑顔が消えた。
つい調子に乗りすぎてしまうのは、私のいけないところだ。
けれど、見上げた恭介さんをよくよく見てみれば、怒っているとも笑顔だともつかない微妙な表情で。
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