番外編

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「まだ早いなんて言ったのはひなたじゃなかったか?」 「そうでした。じゃあ、しない?」 「まさか。今すぐ欲しくなった。まるで二十代に戻ったみたいだな」 「じゃあ、そっちも頑張ります、へへ」 「こら、かわいい奥さんにそんなこと言われたら、歯止めが効かなくなるじゃないか」 「ふふん。じゃあ、一生のお願いです。歯止めなんてかけずにいてください。私、恭介さんのことどんどん好きになっちゃって、歯止めなんてかけられそうにないですから」 「そんなに煽らないでくれ。それと、一生のお願いが二度目だぞ?」 「へ? そうでした?」 「まあいい。一生のお願いを一生聞き続けるのも、面白いかもしれないしな、はははっ」 「あははっ。こ〜んないい旦那様にそんなこと言われるなんて、めちゃくちゃ幸せだな〜」  多分いま、満面の笑みだと思う。  今の私にすぐ出来ることなんて、こうして喜びを抑えずに表現するくらいのことだから。  額をくっつけて笑い合う。キスをして、また笑い合って。  それを何度も繰り返した。  窓から差し込む日差しがまだ明るいせいか、ベッド上にある空気は官能的とは言えない。それでも私たちはベッドから起き上がらずにくっついて、甘ったるい空気を作り続けた。  だって今は、二人だけの夫婦の時間なのだから。  幸せの形は人それぞれ。  他人から見れば歪でも、二人にとって特別な形を作っていけたらいい。  もしかしたらそれが、結婚することの意味なのかな、なんてぼんやり思いながら、大好きな人に笑いかけた。 番外編完結 2021.10.20
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