スピード離婚契約

▼部下と結婚

　三ヶ月くらいなら、と安易に考えたのは、自分も周りから見れば『結婚できない男』の枠に収まっているのかもしれない、と思い当たったからだ。

　それに、勤務中は無難にこなしているように見える石森の、あの酔い方。
　本当は酷く思い悩んでいたのではないか。そう考えると、くだを巻かれただけだと知らんふりを決め込んでいいものか、迷った。
　悩みを苦にした自殺。石森がそういうタイプだと思っているわけでもないが、もしもそんな事になれば、寝覚めが悪いどころの騒ぎでは収まらない。

　そこまで予想して放置する。その選択肢を選ぶことは、やはり出来ない。上司としても、人としても。

　たった三ヶ月の事だ。ママゴトをするような年齢ではないが、仕事だけの毎日にメリハリは出るかもしれない。そうなれば更に仕事の効率は良くなって捗ると考えられなくもないなんて、どうしてかそんな風に思った。

　多忙は変えられないだろうが、日々はあっという間に過ぎて行くだけだからデメリットにはならないんじゃないか。この年なら、バツイチくらいでも丁度いいのかもしれないし。