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「結婚相手が黒川先生みたいなおじいちゃんでもいいなら、のんびりしててもいいだろうけどね」
「やだよっ」
黒川先生、いい人だったけど。
「じゃあひなたも少しは焦りなよ」
「黒いバナナになる前に売れるといいね」
可愛い顔して突き刺すようなことを言うのは花乃だ。
「結局私たちバナナだ! あははっ!」
利里亜と花乃は、顔を見合わせて大笑いしている。
別に私を貶めるのを楽しんでいるとか、そういうわけじゃないんだろうと思う。けど私は、『選ばれなかった女』のレッテルを貼られたような気がした。
それは、悔しい。
「するもんっ、すぐしてみせるもんっ!」
「おお〜、言っちゃったよお?」
あ、言ってしまった。つい、勢いで。
だって嫌なんだもん、そのレッテル。
いつの間にか運ばれてきていたカクテルを飲みながらニヤニヤする利里亜は、女優とかモデルとかなんじゃないかと思うような美貌の持ち主だ。挑発するような態度でも、彼女がやればピタリとハマってしまうだけに余計悔しい。
「ちょっと、そんな焦らなくてもいいって」
隣から慌てた声。私を宥めようとしてくれる美保の声に耳を貸す余裕なんて、もうなかった。
「焦ってない! 誕生日までに絶対結婚してみせる!」
「もう、ひなた、落ち着いて!」
「落ち着いてるっ!」
「頑張れ〜」
腐りかけの、誰にも買ってもらえないバナナになるのは嫌なんだ。
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