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それからすぐ、利里亜と花乃にもそれぞれ報告したのだが、返ってきたのは、おめでとうの一言と驚きを表現したスタンプ、今度会わせて、とそんなような事だった。
マリッジピンクの二人は、自分たちのことで手一杯なのだろう。結婚式の準備は何かと大変だと、美保が結婚するときに訊いていたし。
深く突っ込まれずに済んで、寧ろホッとした。
そこまで済ませて、今まで知るはずもなかった浅井課長の情報が満載になった手帳をバッグから取り出す。
後ろの方の、何のためにあるのか、私にとっては今まであまり必要性のなかったページ。そこに、さっき課長とやり取りした内容が記されている。
その契約内容をもう一度目確かめた。
契約期間三ヶ月
三ヶ月後、離婚(多忙によるすれ違いのため)
週末婚形式(金土のみ浅井課長の部屋に泊まる、日曜に帰る)
契約期間中は恋人を作らない
週末は夫婦らしく過ごす
二人の時は名前で呼び合う
ざっとこんなところだ。
これで私は『選ばれなかった女』から脱却したのだ。友人たちの鼻も明かせる。黒いバナナになって値引きシールを貼られる前に売れたのだ。
美保にも連絡しよう。でも、美保にだけは本当のことを言っておきたい。たった三ヶ月でも、真実を隠しておくのはやっぱりちょっと気が引けるから。
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